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触媒の話(コラム)

【05】石油化学製品製造用触媒(その1) 〜 水素化触媒

はじめに
 2002年の日本の石油化学品製造用触媒の出荷金額は 419億円と工業用触媒 804億円の 52%に達 している。とりわけ水素化触媒は出荷金額こそ明らかではないが、石油化学基礎原料の製造だけで なく石油化学品中間体から各種石油化学製品の製造に至るまで広範囲に使用されており、石油化学 品製造用触媒に占める水素化触媒の重要性は際立っている。

1.水素化触媒
 石油化学品の中でもエチレン・プロピレン・BTXなどの石油化学基礎原料の製造において水素化触 媒が大量に使用されている。即ち反応によって生成した微量不純物を選択的に水素化して除去する 水素化精製プロセス向けの用途であり、以下に代表的な使用先であるエチレンプラントにおける 水素化触媒の使用例に焦点をあてて紹介する。

(1)エチレンの精製
 水素化触媒の目的はエチレン中に 0.4〜2.5mol%含まれるアセチレンを通常 1ppm以下まで、 あるいは最近の傾向では 0.3ppm以下まで気相で水添除去し且つ選択的にエチレンにすることであ る。触媒が充填されている水添塔が脱メタン塔の前段に位置するプロセスをフロントエンド方式、 脱メタン塔の後段に位置するプロセスをテールエンド方式あるいはバックエンド方式と呼んでおり、 それぞれ異なったタイプの触媒が使用されている。10年ほど前まではPd/Al2O3 触媒が使われていた が、現在では助触媒として銀を添加したPd/Ag合金触媒にほとんど置き換わっている。これはグリー ンオイルの生成量が3分の1以下に減少したことによって、エチレンゲインの向上や再生周期の大 幅延長が達成されたためである。例えばエチレンゲインは何れの方式でも30〜60%まで向上してお り、再生周期はフロントエンド方式では1年から2年に延び、最大 3〜4年に、テールエンド方式で は通常1〜4ヶ月だったものが 4〜18ヶ月まで延びている。またテールエンド方式において選択性(エ チレンゲイン)を上げるため従来必要であったCO(一酸化炭素)の添加が不要になったプラントが ある。一方、建設当初からPd/Ag合金触媒の使用を想定し、CO添加設備を持たないプラントも増えて いる。また触媒の活性劣化の原因はポリマーなどのカーボン質の付着で、エアーバーニングによっ て再生除去されるが、一般に触媒の再生はフロントエンド方式ではオフサイトで、テールエンド方 式ではオンサイトで行なわれている。触媒はフロントエンド方式用で 0.02%Pd-Ag/Al2O3 、テール エンド方式用で 0.03〜0.05%Pd-Ag/Al2O3 が一般に用いられている。運転条件としては、フロント エンド方式で触媒層入口温度がSOR で 40〜50℃、EORで 80〜90℃、GHSVが7,000〜24,000/hr/bed、 テールエンド方式で触媒層入口温度がSORで30〜40℃、EORで70〜80℃、GHSVが 4,000〜6,000/ hr/ bed、水素/アセチレンモル比が1.0〜2.0である。
 尚、数は少ないがフィードガス中に硫黄化合物を含むフロントエンド方式のプラントでは硫化ニ ッケル/コバルト系の触媒が使用されている。運転温度は 170〜230℃である。

(2)プロピレンの精製
 プロピレン中のメチルアセチレン、プロパジエンを選択的にプロピレンまで水添する触媒として、 気相、液相の何れの場合もPd/Al2O3 触媒が広く使用されている。液相水添では水添塔などの装置 がコンパクトになり且つ省エネルギーが図れるため最近建設されるプラントはほとんどが液相系と なっている。プロピレンゲインは何れも30〜50%を達成している。気相用触媒は0.03%Pd/Al2O3で、 再生周期は1−2年、触媒寿命は 20年以上で 30年近く使用された例もある。液相用触媒は 0.2〜 0.3%Pd/Al2O3 が一般的であるが、銀などの助触媒を添加して選択性を改良した触媒も使用されて いる。再生周期は1−3年、触媒寿命は10年以上が期待できる。

(3)ブタジエンの精製
 水素化触媒はブタジエンを抽出した後のラフィネートTに含まれているビニルアセチレン、エチ ルアセチレンを液相下で選択的に水素化してブタジエンを回収するプロセスに使用されている。触 媒は0.2〜0.3%Pd/Al2O3で使用温度は30〜60℃である。Pdはビニルアセチレンと錯体を生成し溶出 してしまうが、TBC(t-ブチルカテコール)の存在下で促進されるため、触媒を3年で交換しなけれ ばならないケースがある。そのためPd-Te/Al2O3 などの合金化触媒が開発されている。

(4)1-ブテン/2-ブテンの精製
 ブテン中にわずかに含まれる(0.3〜2%)ブタジエンやビニルアセチレンの気相・液相選択水素 化用に 0.1〜0.7%Pd/Al2O3 の触媒が使用温度 40〜80℃で用いられている。特に水素化反応条件下 1-ブテンが2-ブテンに異性化しやすいことを利用し2-ブテンリッチにする技術は水素化異性化 と呼ばれている。

(5)ブタジエンの選択水素化
 40〜70%のブタジエンを 10ppm以下まで選択的に水素化しブテンを得るプロセスが種々開発され ており、触媒として0.3〜0.5%Pd/Al2O3 が使用されている。

(6)C4/C5の完全水素化
 エチレン及びプロピレン収率を上げるため、ブタジエンあるいはイソプレン抽出後のフィードを 水素化してカーボンの析出が起きないようオレフィン濃度下げてからクラッカーに戻すプロセスが ある。0.3〜0.5%Pd/Al2O3や0.3%Pt/Al2O3 などの触媒が反応温度40〜60℃で使用されている。

(7)分解ガソリンの水素化
 分解ガソリンと呼ばれるC6-C8留分はBTXの原料として重要であり、核水添無しにジオレフィンか らモノオレフィンへの選択的水素化が必要となる。通常一段目で0.3-0.4%Pd/Al2O3触媒を用い、SOR の入口温度50〜60℃でスチレンからエチルベンゼン、ジエンからモノエンへの水素化を行い、二段 目でCo/Mo触媒単独あるいはNi/Mo触媒と組み合わせてSOR入口温度 230〜290℃でモノエンの完全 水素化と水添脱硫、水添脱窒素を行っている。尚、一段目は気液固三相のトリクルベッド、2段目は気相で運転されている。

(8)C8-C12の完全水素化
 溶剤やイソパラフィン製造用として0.2〜0.7%Pd/Al2O3が使用されている。

9)その他
スチレン:
フェニルアセチレンの選択水素化用、0.3〜0.5%Pd/Al2O3
フェノール:
α-メチルスチレンの選択水素化用、0.3%Pd/Al2O3
PTA(高純度テレフタル酸):
4-カルボキシベンズアルデヒドの水素化用、0.5%Pd/Carbon
シクロヘキサン:
ベンゼンの水素化用、Niスポンジ触媒、還元Ni触媒
アニリン:
ニトロベンゼンの選択水素化用、銅クロム触媒
塩ビモノマー:
アセチレンの選択水素化用、0.1〜0.2%Pd/SiC, Pd/Al2O3
石油樹脂:
還元Ni触媒、Ni-W触媒、Pd/Al2O3、Pt/Al2O3

(ズードケミー触媒株式会社)


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