【06】石油化学製品製造用触媒(その2) 〜 酸化触媒
石油化学品製造用触媒の中で酸化触媒は、硫酸、硝酸の製造をはじめ、エチレン、プロピレン等の炭化水素原料を、空気または酸素により酸化して有用な基礎化学品を作る反応に広く用いられている。中でも低コストで大量生産が可能な気相酸化反応は重要な位置を占めており、これらの触媒については現在も広範囲にわたって研究開発が進められている。以下に気相酸化反応によって製造される代表的な石油化学品の製造プロセス並びにその触媒について紹介する。
酸化エチレンは空気から分離した酸素によりエチレンを酸化して製造される。触媒には不活性担体、例えば、α−アルミナ、シリコンカーバイト等からなる球状、円柱状の担体に銀と修飾材としてアルカリ金属、アルカリ土類金属を担持したものが一般的に用いられる。高選択性型の触媒としてレニウムを添加した触媒も実用化されてはいるが、寿命面に問題があるといわれており、どちらのタイプが優れているかは、各プラントの操業条件に依存しているようである。
無水フタル酸はナフタレンまたはオルソキシレンの気相酸化によって製造される。ナフタレン酸化の一部では流動床気相酸化プロセスも用いられているが、世界的に固定床気相酸化プロセスが主流にある。固定床気相酸化プロセスに用いられる触媒としては、主成分のバナジウム、チタンにアルカリ金属、アルカリ土類金属、Xa族、Xb族、Yb族等の元素を助触媒として添加した活性成分を不活性担体に担持したものが一般的である。一方ナフタレンの流動床気相酸化プロセスでは耐摩耗性を向上させるため、バナジウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属よりなる活性成分を数十〜数百μmの微小粒径シリカ担体に担持した触媒が用いられている。またシリカゾル、チタニアゾル等の無機バインダーを活性成分に添加し成形した触媒が用いられる事もある。
無水マレイン酸は、ベンゼンまたはn-ブタンの気相酸化により製造される.ベンゼン酸化は全て固定床気相酸化プロセスであるが、n-ブタン酸化では固定床気相酸化プロセスと流動床気相酸化プロセスとがある。ベンゼン酸化用触媒としては、バナジウム、モリブデン、リンを主成分とする複合酸化物を不活性担体に担持した担持型触媒が一般的である。n−ブタン酸化用触媒は、固定床用、流動床用いずれの場合に於いてもバナジウム、リンからなる複合酸化物、ピロリン酸ジバナジルを主成分とするものが一般的に使用されている。流動床用の触媒では更にシリカゾル等の無機バインダーを加え耐摩耗性を向上させた触媒が使用される。
アクリル酸は紙おむつ等に使用される高級水性樹脂の原料を始めとして、そのポリマー、エステル類が幅広い用途で使用される非常に重要な基礎化学品であり、全世界で年間約300万tが生産されている。その製造方法としてこれまで様々なプロセスについて検討がなされてきたが、今日ではプロピレンからアクロレインを経由しアクリル酸に至る2段気相酸化法が唯一のプロセスとなっている。一段目のプロピレン酸化には、モリブデン、コバルト、ビスマスを主成分とした複合酸化物触媒が用いられ、二段目のアクロレイン酸化にはバナジウム、モリブデンを主成分とした多成分系触媒が用いられている。
メタアクリル酸は、その原料により、ACH(アセトシアノヒドリン)法、MAN(メタアクリロニトリル)法、エチレン法、プロピレン法、直接酸化法の反応様式がある。原料事情によりプロセスは多様化しているが、日本国内では直接酸化法が主流である。直接酸化法は、イソブチレンまたはter-ブタノールからメタクロレインを経由してメタアクリル酸を製造する固定床2段気相酸化反応である。一段目のイソブチレンまたはter-ブタノールの酸化には、モリブデン、コバルト、ビスマスを主成分とした複合酸化物触媒が用いられ、二段目のメタクロレインの酸化は、モリブデン、バナジウム、リンからなるへテロポリ酸系触媒が用いられる。メタアクリル酸はメチルエステル化したMMAモノマーとして使用される事が多い事から、メタアクロレインを一段で酸化・エステル化させてMMAモノマーとする製法も企業化されている。この反応は液相不均一系で行われ、触媒にはパラジウム、鉛を主成分とした系が用いられる。
(株式会社日本触媒)