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触媒の話(コラム)

【07】石油化学製品製造用触媒(その3) 〜 脱水素触媒

脱水素触媒
石油化学製品製造用触媒の中で脱水素触媒はプロピレン・ブテン・ブタジエン・イソプレン・n-オレフィン・BTX・スチレンなどの石油化学基礎原料の製造だけでなく、ホルムアルデヒド・メチルエチルケトン・シクロヘキサノンなどの基礎化学品の製造に広く使用されている。また改質ガソリンの製造も主反応は脱水素反応である。脱水素触媒としては白金、パラジュウム、ニッケル、銅などの金属あるいはクロム、鉄、モリブデンなどの金属酸化物が用いられている。前者は一般的にシンタリングを起こしやすく活性低下が大きいため比較的低温で行われる反応に用いられ、後者は脱水素能は小さいがクラッキングやシンタリングを起こしにくいため、比較的高温を必要とする反応に用いられている。脱水素反応は吸熱反応であり平衡論的には高温・低圧の方が有利であり、反応系より生成物例えば水素を除去することができれば反応は進行することになる。以下に脱水素反応によって製造される代表的な石油化学製品の製造プロセスとその触媒について紹介する。
(1)エチルベンゼンの脱水素によるスチレンの製造
 スチレンはポリスチレン、SBR、ABS、SAN等の製造用モノマーとして、エチレン、プロピレン、塩化ビニルについで生産量の多いモノマーとしての地位を占めており、その大部分がエチルベンゼンの脱水素によって製造されている。反応にはエチルベンゼンの分圧を下げて副反応を抑えると共に触媒上のカーボン析出防止と熱源供給を目的として過熱スチームが添加されている。最近は触媒及びプロセスの研究開発が一体となって進められており、相互の成果が相まって最新鋭のスチレンプラントにおける省エネルギーや原料原単位の改善、製造能力の増強には目覚しいものがある。工業プロセスとしては多管式反応器のBASF、DOWがあるが、断熱式で大型化に対応できるラジアルフロー型の反応器を持つLummus、Badger(Stone & Webster, Shaw group)などのプロセスが現在では主流となっている。反応器は益々大型化の傾向にあり、現在50万トン/年、60万トン/年の生産能力を持つ新設プラントが建設中である。他に生成した水素を酸素と反応させて水素を除去すると共に結果として熱とスチームの供給を行い、平衡上反応を有利にしたUOPのSMARTプロセスがある。主に能力増を目的にプラントを改造するケースにおいて採用が増えている。脱水素触媒は1957年に見出された酸化鉄を今でも主成分とし、助触媒としてカリウムやセリウム、モリブデン、タングステン、マグネシュウム、クロムなどが含まれている。性能としては低スチーム比下で活性、選択性、安定性に優れた触媒が求められており、断熱式反応器においてスチームとエチルベンゼン(オイル)の重量比1.0でも運転可能な触媒が開発されている。一般的な断熱型反応器での反応条件は入口温度: 610〜650℃、出口圧力: 40〜60KPa(0.4気圧〜0.6気圧)、スチーム/オイル重量比: 1.1〜1.8、LHSV: 0.4〜0.6 であり、エチルベンゼン転化率: 62〜69wt.%、スチレン選択率: 96〜98wt.%、触媒寿命: 2〜3年 で運転されている。副生物はトルエン、ベンゼン、及び少量のタール状物である。
 スチレン製造の別法にはスチレン/プロピレンオキサイド併産法(Shell法、Halcon法)があるが、エチルベンゼンの脱水素法は技術的に完成度が高く、また選択率も高いため近い将来にエチルベンゼンを使用しない1段法のスチレン合成が行われることはほとんど期待できないと言われている。エチレンと酸素によるベンゼンの酸化的アルキル化やトルエンのメチレン化、ブタジエンの環化脱水素、その他酸化脱水素法などが研究されているが実用化には至っていない。

(2)パラフィンの脱水素によるオレフィン・ジオレフィンの製造
 この反応には熱力学的には 500℃以上の高温が必要である。そのため触媒には高温下安定で且つクラッキングや異性化、芳香族化、重合を起こすものであってはならない。またこれらの反応を抑える方法として水素やスチームを添加しパラフィンの分圧を低くすることが行われている。性能劣化を起こしスチームを添加できないCr2O3/Al2O3触媒の場合は反応が減圧下で行われている。Houdry-Catofin法/Lummus は Cr2O3/Al2O3触媒を固定床反応器に用い、温度 580〜650℃、20〜40KPa(0.2〜0.4気圧)、10〜30分再生周期で転化率60%選択率 90〜93%で運転されている。Oleflex法/UOP ではPt/Al2O3触媒が水素を添加したCCR反応器で温度580〜670℃、連続再生で運転され、転化率50%、選択率91〜93%を得ている。この他にSTAR法/Phillips はPt-ZnO-CaO/Al2O3触媒、スチーム添加下、固定床反応器、再生周期7時間、温度 510〜600℃、転化率 45〜55%、選択率 85〜95%で運転されている。FBD−4/Snamuprogetti は Cr2O3/Al2O3触媒、流動床反応器、連続再生、温度530〜580℃、転化率 50%、選択率 91%である。Linde法 は Cr2O3/Al2O3触媒、固定床反応器、再生周期6時間、温度 500〜600℃で運転され、転化率 45%、選択率 94%となっている。何れも反応条件を少し変えることによってプロパンだけでなく、n/i-ブタンや高級n/i-パラフィンの脱水素を行うことができる。
 Pacol-Olex法/UOP はPt/Al2O3+プロモーターの固定床触媒上、400〜500℃、気相、0.3MPa(3気圧、水素)、LHSV:4、再生周期2ヶ月の条件下でC6-C14(C19)までのn-パラフィンが水素存在下で脱水素されn-オレフィン(96%直鎖モノオレフィン)がパラフィン転化率 10%、選択性 90%以上で製造されている。副生成物はジエンと芳香族で主生成物のオレフィンはモレキュラーシーブで吸着分離し、未反応n-パラフィンと循環水素は加熱炉で昇温されリサイクルされる。

(3)アルコールの脱水素
 近年銀触媒を使用するメタノール過剰法に代わって高濃度のホルマリンが製造できる鉄・モリブデン触媒を用いる空気過剰法が主流になっている。この触媒は反応温度250〜350℃で運転され、収率は 93%以上、触媒寿命は1〜2年である。
エタノールの脱水素によるアセトアルデヒドの製造:
亜鉛、コバルト、あるいはクロムを加えて活性化した銅触媒上270〜300℃の条件で、転化率 30〜50%、収率 90〜95%で運転されていた。また銀触媒を用いた酸化脱水素法によっても製造されていたが、現在日本ではエチレンの直接酸化法でのみ生産されている。ブチルアルデヒドも今ではブタノールからではなく、プロピレン・一酸化炭素・水素からオキソ合成によって製造されている。
アセトンとメチルエチルケトン(MEK)の製造:
イソプロピルアルコールを気相で酸化亜鉛触媒を用いて脱水素する方法は日本では行われていない。第2ブタノールを400〜500℃気相で銅・亜鉛触媒によって、液相ではスポンジニッケル触媒や銅クロム触媒を用いて、同じく脱水素することによってMEKを製造している。
環状アルコールの脱水素によるアノンの製造:
ナイロン−6の原料であるシクロヘキサノンはシクロヘキサノールの脱水素によって製造されており亜鉛・カルシウム触媒では 350〜450℃、常圧下、選択率は 98%以上になる。銅・亜鉛、銅・クロム触媒では 200〜280℃、常圧下、転化率 65%、選択性99%以上、2年以上の触媒寿命となっている。Ru/Carbon触媒を用いると320℃において70%の収率が得られている。
(4)環化脱水素
 γ―ブチルラクトンが1,4ブタンジオールから銅触媒を用いて200〜250℃、環化脱水素によって収率 90%で製造されている。N-ヘキサンを脱水素環化してベンゼンを得る触媒として、Pt-K-L型ゼオライトやF-L型ゼオライトが見出されている。

(ズードケミー触媒株式会社)


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