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触媒の話(コラム)

【08】石油化学製品製造用触媒(その4) 〜 異性化・アルキル化用触媒

(1)異性化触媒
 異性化触媒とは、ある化合物をより有用な異性体へ変化させる際に用いられる触媒である。異性化の種類が多いので、触媒の種類も多様ではあるが、代表的な工業触媒反応の例としては、パラフィンの骨格異性化、キシレンの異性化、及びオレフィンC=C二重結合の移動、などがある。
 パラフィンの骨格異性化では、ガソリンのオクタン価向上の目的で、直鎖パラフィンをイソ−パラフィンへの変換する反応が広く行われている。イソ−パラフィンの方が直鎖パラフィンよりもアンチノック性に優れ、オクタン価を上げることができるためである。触媒には、固体酸触媒にPtの触媒能を付与したものが用いられる。Pt/Al2O3−Cl系触媒は活性が高く、イソ−パラフィン生成平衡に有利な低温で操業することができるが、被毒に弱く原料精製の必要がある。Pt/ゼオライト系触媒は、ハロゲンフリーで操業でき被毒にも比較的強いが、反応温度が少し高めとなり、平衡的には若干不利である。コスモ総研で開発されUOPに採用された、Pt/硫酸処理-ZrO2はハロゲンを使わずに操業でき、ゼオライト系触媒よりも活性が高く低温で反応できる。被毒にも比較的強い。
 キシレンの異性化は、PETの原料となるp-キシレンを他の異性体(エチルベンゼンやm-キシレンなど)から変換して得るのが目的である。触媒としては、やはりゼオライトの固体酸とPtの触媒能を組合せたPt/ゼオライト系が主として用いられる。ゼオライトの中でも、特にZSM-5は、細孔径が目的物のp-キシレンに丁度よい大きさのため不均化を抑制しつつ選択的にp−キシレンを生成させることができる。ZSM-5は、三次元の細孔構造を持っていることから拡散も有利であり、良好な結果が得られる。
 オレフィンC=C二重結合の移動に関わる異性化は、前二者ほど大規模で実施されている訳ではなく、寧ろファインケミカル系の合成に用いられることが多い。最も高選択性な一例として、l−メントール合成の中間工程における、Rh[(S)-BINAP] カチオン錯体触媒を用いた反応がある(高砂香料)。l−メントールの合成において、ゲラニルジエチルアミンのアミノ基のβ位にある二重結合をRh錯体触媒の存在下でα位へ移動させるものである。このとき、元の二重結合と同一平面上にあるγ位のメチル基炭素が、エナンチオ選択的にR位となり、(R)-シトロネラールエナミンが選択的に生成する。これよりいくつかの工程を経て、l−メントールが合成されている。

(2)アルキル化触媒
 アルキル化触媒は、有機化合物にアルキル基を導入する際に用いられる触媒である。種々のアル キル化反応があるが、代表的なものとして、オレフィンによるベンゼンのアルキル化、フェノールのアルキル化があり、いずれも固体酸触媒が広く用いられる。
 エチレンによるベンゼンのアルキル化ではエチルベンゼンが生成する。エチルベンゼンは、前述の異性化でp−キシレンへ持っていくか、または脱水素してスチレンとして利用される。触媒としては、BF3担持γ−アルミナ(Alkar法)、ゼオライト(Mobile-Badger法)などが用いられる。
 プロピレンを用いたベンゼンのアルキル化によって、クメンが生産されている。触媒には、H3PO4担持SiO2が使用されるが、りん酸によるプラントの腐食の問題がある。このため、ゼオライト(MCM-22、MCM-56)を用いた製法が開発されている(Mobile-Raytheon法)。
 フェノールのアルキル化によるt−ブチルフェノールやノニルフェノールの合成では、反応が比較的容易に進むので、アルミナやシリカアルミナのような一般的な固体酸触媒のほか、酸性型陽イオン交換樹脂でも反応を進めることができる。
 アルキル化剤として、オレフィンではなくケトンやアルデヒドを用い、水素雰囲気下で反応を実施する場合は、還元アルキル化と呼ばれ、主に懸濁床でPt/カーボン粉末触媒が用いられる。ファインケミカル分野での応用例が多い。

(エヌ・イーケムキャット株式会社)


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