【11】ガス製造用触媒
ガス製造用触媒はアンモニア、メタノールなどの原料となる合成ガスおよび石油精製などに使用される水素を製造する触媒である。合成ガスはフィッシャー・トロプシュ反応やジメチルエーテル合成反応にも用いられる。都市ガス製造触媒もガス製造用触媒に含まれるが、近年天然ガスへの転換が進み、需要は急激に低下している。一方、新たに燃料電池が注目され始め、同様の水素製造触媒が用いられている。
反応別には、(1)脱硫反応、(2)改質反応、(3)水性ガスシフト反応および(4)メタン化反応の4つに大別できる。
(1)脱硫反応
水素や合成ガスの原料である天然ガス、液化石油ガス、ナフサなどの中には硫黄化合物が含まれ、これらが後段の改質触媒、シフト触媒の触媒毒となるため、まず初めに硫黄を除くために脱硫触媒が用いられる。メチルメルカプタンなどの有機硫黄化合物は、古くは活性炭などで吸着除去が行われていたが、現在ではCo-MoあるいはNi-Mo系触媒で水素化分解し、硫化水素に変換した後、酸化亜鉛によって除去される。除去後の硫黄濃度は数十ppb程度とされ、通常の運転には十分であるが、最近ではさらに低いレベルまで脱硫可能な技術も開発されている。
(2)改質反応
脱硫された炭化水素はNi系の触媒上で水蒸気と反応し、水素、一酸化炭素、二酸化炭素からなる混合ガスに転換される。水蒸気改質反応は大きな吸熱反応であるため、多管式反応器を外部から加熱して実施される。また、アンモニアプラントでは原料として窒素が必要なため、改質反応を2段に分け、後段で空気を導入して部分酸化改質反応が行われている。触媒はアルミナなどの担体にNiを含浸したものが使われるが、低い圧力損失と高い活性(幾何学的表面積)、高い圧壊強度が求められるので、車輪状や複数の穴を持つ異型形状(図参照)が工夫されている。天然ガス中のエタン以上の炭化水素やナフサなどを多管式改質器の前で、断熱的に分解と改質を行う予備改質反応が採用される場合がある。改質が難しい高級炭化水素がほぼメタンに分解されるため運転上のメリットは多い。予備改質触媒はNiを主成分とし、沈殿法で作られる。
(3)水性ガスシフト反応
改質反応後のガスに含まれる10%程度の一酸化炭素と水蒸気を反応させて水素と二酸化炭素に転化するのが水性ガスシフト反応である。通常、400℃前後でFe−Cr系触媒上で行われる高温シフト反応と、200℃前後でCu-Zn系触媒上で行われる低温シフト反応の二段に分けて行われ、両反応器の間では熱交換器によってガス温度が下げられる。高温シフト反応触媒では合成ガスから炭化水素が生成する副反応を、また低温シフト反応触媒ではメタノールが副生成する反応を抑制する組成上の工夫が夫々の触媒で行われている。
(4)メタン化反応
アンモニアプラントでは、シフト反応器を出たガスから二酸化炭素を吸収塔で除いた後も微量に残る一酸化炭素と二酸化炭素をメタン化反応によってメタンに転化する。これらはアンモニア合成触媒を酸化する阻害物質となるからである。触媒は沈殿法で作られるNi触媒で300-400℃で用いられる。
これらの触媒を使用するアンモニア工業は、アンモニアの消費地に近い地域から、原料の天然ガスが豊富に産出する地域への移行が進行し、さらに一工場あたりの製造量はかっての日産1,000トンから、2,200トン規模に大型化が進んでいる。因みに、最近の国内年間生産量は130万トン程度にまで低下している。日本のメタノール生産が停止して久しいが、近年天然ガス産地に建設される工場は日産5,000トン規模に達している。一方、新しい動きとして、合成ガスからフィッシャー・トロプシュ反応によって合成ガソリン類を製造することや、合成ガスから直接ないしはメタノールを経由してジメチルエーテルを合成する計画が各地で進んでいる。合成ガソリンやジメチルエーテルは硫黄分を含まず、産油国に依存しないエネルギーとして期待されている。
水素の需要は石油精製工場における水素化脱硫用が大きな比重を占めているが、各種石油製品中の硫黄分の低下に従って水素の需要が増加してきている。新たな水素の用途として燃料電池が注目を集めている。天然ガス、液化石油ガス、灯油などを原料として、化学プラントと同様、脱硫反応、改質反応、水性ガスシフト反応が行われる。比較的低温で運転されるリン酸形や固体高分子形燃料電池では純度の高い水素を供給する必要があり、特に固体高分子形では電極の性能上、残存一酸化炭素は10ppm以下であることが求められている。水素と二酸化炭素が存在する中で一酸化炭素を除くために燃料電池特有の触媒として選択的一酸化炭素酸化触媒が開発されている。その他に化学プラントと異なる触媒として、常温吸着脱硫剤や貴金属系の水性ガスシフト触媒が用いられている場合がある。
このように、合成ガスおよび水素製造用触媒を取り巻く状況は変化しつつも、その重要性は従来以上に増してきていると言える。

改質反応用異型形状触媒例
(ズードケミー触媒株式会社)