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触媒の話(コラム)

【13】 医薬・食品製造用触媒

1.概 要
医薬、農薬、香料、染料やそれらの中間体等のファインケミカルズを合成する技術はますます高度化している。特に触媒を用いて各種の官能基を水素化する反応は、ファインケミカルズ合成上重要な手段であり、多様な触媒が使われている。反応は殆どがバッチ生産であるが、触媒の種類により不均一系触媒反応と均一系触媒反応に分類することができる。
不均一系触媒反応においては粉末状の触媒が用いられる。これらには、活性炭やアルミナ等の担体に各種の金属を吸着させた担持型触媒やスポンジ触媒がある。代表的な担持型触媒である貴金属触媒は、活性が高く穏和な条件下で反応するが、使用コストは高めである。このため使用済触媒からの貴金属の回収は触媒メーカーの重要な業務となっている。一方、スポンジ触媒やニッケル珪藻土は触媒コスト面では有利であるが圧力、温度等の反応条件が厳しくなる。
均一系触媒反応では金属錯体が利用され、溶媒に溶解した状態で反応を行う。配位子を替えることなどによって反応性の制御が可能である。特に、不斉炭素を有する配位子を用いることで、不斉水素化反応が行われている。反応後の錯体分離は蒸留や溶媒抽出法が用いられている。
ファインケミカルズの製造では、各種の触媒がニトロ基、オレフィン、ケトン、アルデヒド等の水素化や脱ベンジル反応等に幅広く使用されている。
食品関連の分野で触媒が使われている例としてはグルコースのソルビトールへの還元やマレイン酸からコハク酸合成、食品用硬化油製造等である。

2.担持型触媒
触媒の担体としては活性炭、アルミナ、珪藻土等が多く使用されている。活性金属として、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、ニッケル等が用いられ、担体との組合せで目的の反応に適した触媒が調製されている。
担体の形状、性状、粒度、金属の種類、担持量の組合せで多様な触媒が製造されている。代表的触媒として、パラジウム炭素、白金炭素、ルテニウム炭素、ロジウムアルミナ、ニッケル珪藻土等の触媒が使用される。金属の担持量は通常、1〜10%程度である。

3.スポンジ型触媒
代表的触媒として、スポンジニッケル、スポンジコバルト、スポンジ銅がある。更に、活性・選択性向上を目的にモリブデンや鉄を添加した3元系のスポンジ触媒も一般的に使用されている。

4.錯体触媒(均一系触媒)
錯体触媒として用いられる金属は、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム等がある。配位子としては、様々な化合物が用いられており、単座配位子としてはハロゲンイオンやアンモニア、トリフェニルホスフィン等がある。また、多座配位子としてはBINAP等に代表される不斉配位子などが多く用いられている。

5.適合触媒
目的とする反応とその反応に適合する触媒を以下に示す。

1)オレフィン、アセチレンの水素化:
オレフィンの水素化は最も一般的な反応で、スポンジニッケル、珪藻土等のニッケル担持触媒やパラジウム、白金等の貴金属担持触媒が使用される。アセチレンの選択的水素化触媒として、パラジウム炭酸カルシウムやパラジウム硫酸バリウム等が用いられる。錯体触媒ではBINAPを配位子としてルテニウム、ロジウム系触媒により不斉還元が行われている。

2)ケトン、アルデヒドの水素化:
スポンジニッケル、パラジウム炭素(アルミナ)、白金炭素(アルミナ)、ルテニウム炭素(アルミナ)触媒をそれぞれ使用すると相当するアルコールを生成する。また、BINAPを配位子としたルテニウム触媒によりβ−ケトエステルの不斉還元やℓ-メントールの合成が行われている。

3)ニトロ化合物の水素化:
ニトロ化合物の水素化は医療、農薬、染料の合成に広く用いられる反応であり、パラジウム炭素、白金炭素、スポンジニッケルが有効である。

4)ニトリルの水素化:
通常スポンジコバルトを用いると、高収率で第1級アミンが得られる。またスポンジニッケル、パラジウム炭素、白金炭素も用いられる。アンモニアを添加するとアミンの二量化を抑制できる。

5)芳香族化合物の水素化:
オレフィンの水素化よりも反応が進み難く、高温、高圧を必要とする。ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム触媒がそれぞれ芳香族化合物の水素化に使用される。

6)水素化分解:
ベンジル基、アリル化合物、ハロゲン化合物の水素化分解には、パラジウム触媒が最も適している。脱ベンジル反応は保護基の脱離で、医薬の合成では重要な手段である。

(川研ファインケミカル)


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