【15】 生活関連用触媒
触媒は、工業的用途の他に、生活環境の保全・改善を目的として、発熱・暖房・脱臭・脱煙・防汚・抗菌等の機能を有するものが、生活関連用に広く使用されている。1)、2)
1.発熱、燃焼
触媒上で燃料を燃焼させ、その発熱を利用した商品が既に市販されている。
- ◇点火ヒーター3)
- 発熱体ヒーターにPt触媒を付着させて燃焼開始温度を下げ、低温着火(乾電池着火)を可能としたものである。
- ◇白金カイロ4)
- Ptを添着した触媒マット層上で、ベンジンのような揮発燃料を徐々に触媒燃焼させて、適切な温度を保持できるようにした暖房器具である。
- ◇コードレス半田ごて2)
- 乾電池や圧電素子等で燃料の液化天然ガスを点火し、ハニカム状の触媒上で燃焼を継続させることにより、電源を不要としたこてである。電源のない屋外での作業が可能であり、リーク電流の心配もない。構造を図1に示す。

2.脱臭、脱煙
家電分野の脱臭・脱煙用途に触媒は広く応用されている。
- ◇脱煙、脱臭
- (魚焼器、IHクッキングオーブン、ガスオーブン)
魚や肉を焼くと油脂分や臭気成分(アルデヒド、アルキルアミン)が発生する。油脂分は調理器や排気ファンを汚し、臭気成分は部屋内の臭気の原因となる。調理器の天板や排煙口等に触媒を取付け、油脂分・臭気成分の酸化分解による脱臭を行う。5)
- ◇脱臭用途
- (こたつ、冷蔵庫、空気清浄機、靴乾燥機など)
こたつでは、ヒーターの表面に塗布された触媒上で、人体から発生するイソ吉草酸などの悪臭を酸化分解除去する2)。
冷蔵庫では、Pt・アルミナ・ゼオライト等からなる触媒が霜取ヒーター表面に塗布される。臭気成分は一旦ゼオライトに吸着したのち、霜取ヒーター作動時にヒーター熱を利用してPt触媒により酸化分解除去される。2)
空気清浄機6―7)では光触媒が用いられている。機種によりシステムは異なるが、例を図2に示す。異なる機能(除塵、プラズマ分解、吸着など)を持つ複数のフィルターの組合せで使用される。

一般に、紫外線により光触媒表面上に「・OH」ラジカルや「O2−」が生成する。
これらは強い酸化力を有し、VOCや臭気成分だけでなく、ディーゼル粉塵、花粉、ダニ等のアレルギーの原因物質を分解させることが可能である。
また、靴乾燥機でも光触媒が用いられており、殺菌力のある紫外線と組合せて、靴の臭気成分であるイソ吉草酸などの悪臭の酸化脱臭を行う殺菌脱臭乾燥機が市販されている。
3.抗菌、殺菌、防汚、防曇
光触媒は、紫外線との組合せで強力な殺菌効果が期待できる。
- ◇抗菌・殺菌
- Ag/TiO2やCu/TiO2などを塗布したタイルが、手術室等向けに開発されている。大腸菌、ブドウ球菌、レジオネラ菌、緑膿菌、セラチア菌等の殺菌効果が実証されており、院内感染の防止に役立つと期待されている。8−10)
- ◇防汚・防曇
- 紫外線が照射された光触媒TiO2層の表面がOH基で覆われて超親水性を示すので、親油性の汚れ(油分や埃等の汚れ)を容易に洗い落とすことができる。
これらは道路のガードレール、防音壁、住宅外壁材、アコーディオン倉庫等に利用される。また、ガラスや鏡に超親水性を与えると防曇効果が生まれ、自動車のサイドミラー、浴室・洗面室の鏡、ガラス外壁等に応用される。9)、10).
(エヌ・イーケムキャット株式会社)
参考文献
- 1)大西孝治:触媒−その秘密を探る、P.2-12、大日本図書(1985)
- 2)触媒工業協会技術委員会編纂:改訂版触媒の話、P.62-74、化学工業日報社(2000)
- 3)栗田学、森川茂:最新触媒利用技術、P.211-214、アイピーシー(1985)
- 4)ハクキンホームページ: http://www.hakukin.co.jp
- 5)新山浩雄監修:触媒利用技術集成、P.197、信山社サイテック(1991)
- 6)浜口清人:電機、P.49-51、(2006.1)
- 7)寺山勝則:電機、P.40-42、(2006.3)
- 8)特許庁:平成15年度特許出願技術動向調査報告書、光触媒(2006)
- 9)橋本和仁、藤嶋昭:触媒、Vol.36、No.7、524(1994)
- 10)橋本和仁、大谷文章、工藤昭彦:光触媒、エヌ・ティー・エス(2005)