【16】 燃料電池用触媒
燃料電池は、電極上において、水素などの燃料と酸素(空気)による酸化還元反応を電気化学的に行わせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーとして取り出す様に構成された発電システムである。エネルギー効率が高く、また生成物が水だけで、有害な排出物が出ないことから、次世代のクリーンエネルギー源として注目され、活発に研究開発が進められている。
燃料電池と触媒
(1)代表的な燃料電池の種類
燃料電池は、電解質の種類や、反応などにより、いくつかのタイプに分類される。代表的なものを下の表に示す。年代的には、りん酸形PAFCや溶融炭酸塩形MCFCなどの定置型の燃料電池の開発が先行したが、近年は固体高分子形PEFCやダイレクトメタノール形DMFCの燃料電池が主流となり開発が進められている。
(2)PEFC
固体高分子形PEFCは、電解質に高分子のイオン交換膜(パーフルオロスルフォン酸系)を使用し、作動温度が低く、装置を小型化でき、高出力が得られるので、一般向けの小型電源として最も注目され、普及が期待されている。PEFCの電極触媒には、燃料極(負極、アノード)、空気極(正極、カソード)ともに白金をカーボン担体に分散担持した電極触媒が使用される。燃料に改質ガスの水素を使用する場合、作動温度が低いため白金触媒が改質ガス中に残存するCOの被毒を受けやすく、性能が低下する。このため、COが10ppm以下の改質ガスを使用する必要がある。また、CO被毒に対して耐久性がある白金・ルテニウム系合金をカーボン担体に分散担持した電極触媒が使用される。
| 燃料極 | 2H2 → 4H+ + 4e− |
| 空気極 | O2 + 4H+ + 4e− → 2H2O |
| 全体の反応 | O2 + 2H2 → 2H2O (標準起電力 E0 = 1.23 V) |
電極は、触媒層とガス拡散層の2層構造で構成される。一般に、電極基材上に、触媒と高分子電解質溶液の混合物を塗布し、触媒層を形成した電極を、固体高分子電解質膜に圧着することでMEA(膜・電極接合体)が作成される。MEAは燃料電池の性能を左右し、重要である。
(3)DMFC
ダイレクトメタノール形DMFCは、固体高分子形燃料電池の一種で、燃料に水素の代わりにメタノール水溶液を使用し、直接これを電極上で反応させ、発電するもの。改質器が不要であり、小型軽量化が可能であることからノートパソコン、携帯電話などの携帯電子機器の電源に適しており、研究開発が進められている。燃料極および空気極には、それぞれ白金・ルテニウム合金および白金をカーボン担体に分散担持した電極触媒の使用事例などが発表されている。
| 燃料極 | CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ + 6e− |
| 空気極 | 1.5O2 + 6H+ + 6e− → 3H2O |
| 全体の反応 | CH3OH +1.5O2 → CO2 +2H2O |
DMFCは、小型化できる点が有利だが、水素に比べてメタノールの反応速度が遅いため、PEFCよりも電池の出力が低い。メタノール濃度が高くなると、メタノールの一部が水素イオンと共に固体高分子電解質膜を透過して、空気極で酸化されることも出力低下の要因であり、最大の課題となっている。また、メタノールの反応過程で生成するCOが、白金触媒の活性を低下させる。メタノールを透過させない電解質膜の開発など、課題の克服へ向けた研究開発が進められている。
(4)改 質
燃料水素の供給源については、純水素に加えて、種々の炭化水素系燃料を改質して製造した水素が供給源となる。改質の方法には、水蒸気改質法、部分酸化改質法、オートサーマル法があり、また炭化水素系燃料も種々あるので、使用する燃料・プロセスにより改質システムが異なる。一般には改質システムは、(脱硫)→(改質)→(CO変性)→(CO選択酸化)の4工程から構成され、これに対応した触媒が求められる。脱硫では、有機硫黄はNi-Mo系やCo-Mo系の水添脱硫触媒でH2Sに転換した後、ZnOで脱硫する。改質では、水蒸気改質の場合、原料炭化水素と水蒸気を反応させH2とCOにするもので、Ni系触媒や高性能な貴金属系触媒が使用される。天然ガスの主成分CH4での改質反応例を下に示す。尚、水蒸気改質は吸熱反応なので、外部からの加熱が必要である。改質ガス中には、約10%程度のCOがあり、これをCO変性することで、COを低減させ且つH2の量を増やす。Fe-Cr系触媒で高温CO変性を行い、COを2〜3%程度まで低減させる。生成ガスを冷却し、Cu-Zn系触媒で低温CO変性を行い、COを1%以下とする。CO選択酸化では、改質ガスに微量の空気を入れ、白金系の触媒を用い100〜200℃でCOを酸化CO2にする。CO濃度は、最終的に10ppm以下レベルまで下げることができる。
| 水蒸気改質 | CH4 + 2H2O → 4H2 + CO2 |
| CO変性 | CO + 2H2O → H2 + CO2 |
| CO選択酸化 | CO + 0.5 O2 → CO2 |
燃料電池の仕組み

代表的な燃料電池の種類
| | 固体高 分子形 (PEFC) | ダイレクト メタノール形 (DMFC) | りん酸形 (PAFC) | 溶融炭酸塩形 (MCFC) | 固体電解質形 (SOFC) |
| 作動温度 | 常温〜約90℃ | 〜約80℃ | 約200℃ | 約650℃ | 約1000℃ |
| 電解質 | 陽イオン交換膜 | 陽イオン交換膜 | りん酸 | 炭酸塩 | 安定化ジルコニア |
| 燃料 | 水素 | メタノール | 水素 | 水素、一酸化炭素 | 水素、一酸化炭素 |
| 開発状況 | 実用化 (導入普及段階) | 研究・開発段階 (試作導入) | 実用化 (導入普及段階) | 研究段階 (プラント実証段階) | 研究段階 (数百kW試験中) |
| 用途 | 家庭用 自動車用 携帯用 | ノートパソコン用、 モバイル機器用 | 工業用 業務用 | 工業用 分散電源用 | 工業用 分散電源用 |